つかのま。

読書と日々考えたこと

【大阪旅行:2泊3日】〜3日目:四天王寺と古墳〜

最終日3日目。
この日も朝一番で炭水化物を肉吸いとミネストローネで流し込み、8時頃にはチェックアウト。

飛行機は夜の便。方角的にも途中の堺でじっくりのんびり古墳めぐりを…と思っていたが、急遽予定変更。朝一番で四天王寺によることにした。

前日に訪れた大阪歴史博物館の展示で触れられていて、実際に見たくなったので。

8時半から有料拝観開始ということで、オープン直後を狙って天王寺駅から徒歩で向かう。Goggleマップの案内に従うと庚申堂前を通って南大門から入るルートだった。住宅街から覗く五重塔が印象的。

まずは中心伽藍から。



朝一番ということもあって、他の人はごくわずか。静謐な雰囲気でぐるりとまわる。

ちょうど金堂の中を見ていた時、読経がはじまった。

敷地内のいたるところにたくさんの名前がおさめられている。私は典型的な沖縄人という感じで、家に仏壇はあれど仏教的なものだという感覚はほぼないまま生きているわけだが、敷地中にあふれる名前と、住宅街から覗く五重塔と、朝の静寂の中に響く読経とに、くらしに溶け込む信仰をひしひしと感じた。

五重塔の中にも入った。ここにもたくさんの供養のしるし。真っ先に思い出したのは、牛久大仏の胎内だった。塔と大仏とで外見は違えど、そこにあるのは同じだと思った。

もう一つ思い出したのは、以前ウクライナに行ったときに訪れた教会だったりする。


境内をぐるぐると。
これは亀の池の亀。あまりにも動かないので一瞬作り物かと思ってしまったが、水の中には傾斜をうまく上がれずもそもそしている亀がいたりした。亀の文鎮とても欲しくなってしまった(エンデ的にも亀には愛着が…)けれども流石にちょっと諦めた。


庭園の方も散策したり。宝物館にも行きたかったのだけど、閉まっていた。計画性のしわ寄せがここにも…。

義経のよろい掛け松を眺めて、前日に行った逆櫓の松跡からのつながりを感じる。

ひと通り眺めたところでもうすでに11時頃。宝物館に行けなかったにも関わらず想定よりも時間をとってしまっていて、急ぎ気味に天王寺駅に戻った。


そのまま、阪和線に乗り込んで堺に向かう。目的地は大仙陵古墳堺市博物館。最寄りは百舌鳥駅だが、荷物をロッカーに預けたいのと、空港までのアクセスを鑑みて、一度手前の三国ヶ丘で降りる。三国ヶ丘は2階の南海電鉄改札前にロッカーがある。

お昼をどこでとるか決めかねていた。三国ヶ丘の方が近隣の飲食店は充実しているが、とりあえず百舌鳥駅に向かうことにした。

百舌鳥駅から博物館へ向かう道すがら、さっそくこんもりとした古墳を見つける。



いよいよ来たぞと否応なくテンションが上がる。

お昼には古墳カレーにチャレンジしたかったのだが、お店が閉まっていたようだった(やっていたのかもしれないけど…)。


そこで、カレーは諦めて古墳バーガーに。
大仙公園内のこふん前cafe IROHA。

ボリューミーなバーガーの下のトレイも前方後円風。かわいい。



一息ついて、まずは堺市博物館へ。

流石に古墳関係の展示が手厚いが、そこを起点に今につながるまでの堺の歴史をざっと学べる、コンパクトだけど良い感じの博物館だった。

中でも須恵器を時代別に並べた展示などが圧巻の物量。古代から中世までへの連続性を感じさせるような展示だった。

お気に入りは失敗須恵器が並ぶ一角。



ぐにゃ…となってたり蓋がくっついちゃったり、窯自体が崩壊しちゃったり。うまくいかないことっていつの時代もあるよねぇ…。

所要時間40分くらいのはずが大幅に超過する。これでも一言一句読んだりはしてないのだけど、博物館の所要時間ってどうやって算出してるんだろう?どの博物館に行っても常に時間は足りてない。

ひとまず満足したところで外に出る。すぐそこの堺市茶室伸庵でお茶をいただくことにする。博物館で千利休の名前を見たりするとね…。

かわいいお菓子とお茶。
本格的なお抹茶をいただくのは多分初めてか2回目くらい。椅子席なのもあって気軽な感じ。でも、亭主役の方の所作がものすごく自然に綺麗で素敵だった。先客が退室したときには戸が閉まってからもしばらく礼を続けていたのを見て、いざ自分が退室するときにもこの戸の向こうにいらっしゃるのだなぁと感じていた。

いよいよ古墳に繰り出す。


大仙陵古墳の正面。


基本的には一番外の濠の更に外の遊歩道からしか覗けないわけだけど、この正面部分は一番深く入れるところだ。

ボランティアガイドさんから色々と話を聞く。だいたいは堺市博物館(と近大行ったときに読んでた本)で知っていた内容だったが、実際に「仁徳さん」と読んでいるのを聞いて感慨にふけるなど。

ここから半周して三国ヶ丘に戻る予定だったので、半周なら時計回りと反時計回りどっちがおすすめか?と質問して、それなら時計回りが良いと教えてもらう。万葉集の歌碑なんかもあっておすすめだとのこと。

一度反対方向のビジターセンターによって古墳みやげをちょっとだけ買い、歩き出す。

周囲は遊歩道が整備されているので、迷うことはない。古墳を常に右手に見ながらずんずん進む。

とにかくでかいし、道沿いだけでも次々と陪冢が出てくる。地上からみたらただの山と池にしか見えないんじゃないかなぁと思っていたが、実際見てみると陪冢の小さめの円墳でも、自然のものではないのが感覚的にわかるし、鬱蒼とした大仙陵古墳ももちろんそうだった。


ボランティアガイドさんおすすめの万葉集歌碑。



おそらくサギ?白い鳥と黒い鳥が並んでとまっているのが印象的だった。ほかにもいかにも鴨というビジュアルの鴨が泳いでいたりした。

大仙陵古墳に実際に埋葬されたのが仁徳天皇かどうかは考古学的には確かめられてないが、確実にその当時相当の権勢を誇っていた誰かなのだろうなというのは納得できる。そしてこの古墳が古墳時代から現代に突如現れたわけではなく、ずっとそこにあって人々のくらしの中に自然とあり続けたのだろうということも。

そうこうしているうちに、三国ヶ丘駅前に着く。もう少し時間があったので、眼の前のこ・ふんカフェへ。



古墳アイスで一服。かわいい。ほろ苦抹茶ソースたっぷりで美味しかった。

その後はロッカーから荷物を回収して、そのまま関空快速で空港へ。



これは空港での駆け込み551。豚まんは正直良くわからなかった(美味しかったけども普通においしいなという感じで)が、海老焼売は確かに美味しかった。

Peachはターミナル2、搭乗口はかなり奥。歩き回ってすっかり疲れており、腰に危機感を持ち始める。ついついマッサージチェアに課金しつつ、ラストの便で那覇に帰った。帰宅が遅くなりすぎるので欲ばらずにもう一本早くしても良かったかもと思いつつ、やりたいことは全部できたなと満足感も覚えつつ。飛行機の中で読もうと思って本を毎回用意するのに、毎回爆睡して半分も読めない。


以上、今回の大阪旅行の振り返り。
全然体力がないのに四六時中歩き回っているような観光をしたり、あちこちニアピンで逃したりと後悔は若干あるが、トータルでは詰め込みたいものを全部詰め込めた旅だった。

【大阪旅行:2泊3日】〜2日目:ハリポタと歴史旅〜

2日目の朝は東横INN恒例の朝食サービスから始まる。

この店舗の朝食は色んな種類のおにぎりとパン、そしてスープ類。ご当地メニューとしては肉吸いがあった。炭水化物をちゃちゃっとほうじ茶で流し込み、8時頃には宿を出た。


宿のすぐそこには駅名の由来にもなっている櫻宮があった。朝早いのと時間も気になっていたのもあって境内には入らず、外でササッと「宿を借りてます」と胸中挨拶するに留める。

そういえばこのあたりは造幣局の近くでもある。せっかくだから造幣博物館にも行けばよかったなぁと今更思ってもあとの祭りだし、ねじ込むスケジュールの余裕はなかった。


2日目の目標はUSJのハリポタエリアに行くことと、大阪城に行くこと。この2箇所は旅行前からぼんやり行きたいなぁと考えていた場所で、本当は大阪城を三日目にする予定だったのだけど、三日目には堺の方に行くことにしたので二日目にねじ込むことにした。自分の性格的に多分USJは短時間でリタイアするな…という予感もあった。


USJには桜ノ宮駅からユニバーサルシティ方面行きの電車に乗り一本で到着。とても便利。


開園直後に入れるように行ったもののすでに人でごった返しており、これがテーマパーク…と圧倒されながらハリポタエリアへ。


写真パシャパシャ撮っていたけど、人混みがすごすぎてブログに気軽に載せられる写真はほぼない。屋根しか…。

正直あ~テーマパークだな〜という雰囲気なのと細部が気になってしまうのもあって「映画の世界に迷い込んだ」というような感覚は薄いのだが、それでもやっぱりワクワクする。最近金ロー(のXトレンド)や多読の影響もあってハリポタ熱が上がり気味だったのでなおさら。

浮かれているのでマフラーなんかを買ってみたり。ハッフルパフとレイブンクローで少し悩んでハッフルパフを選んだ。

ハリポタはどちらかというと「自分があの世界の人間だったら…」という視点で読みがちな作品で、絶対ハリーたちには近づかんとこ…と思っているのもあってグリフィンドールとスリザリンは避けがち。勉強ができるレイブンクローに憧れつつ、善性の点でハッフルパフ生でありたいと思ったりする。ので、ハッフルパフ。

そして今回一番の目的は「杖を買うこと」。ハリポタのエリアができてから一度は来たかった理由の一番はこれ。

すでに行列が発生してしまっている中、いそいそとオリバンダーのショーに並ぶ。並ぶ前にバタービールを買えば良かったなぁと後悔しつつホグワーツを眺めて結構待つ。


オリバンダーのショーは雰囲気抜群、とても良かった。

気分を高めて杖店内へ。ひとつひとつ説明を読みつつ真剣に悩みに悩み、選んだ杖はこちら。

黒檀にユニコーンのたてがみ。
説明文が良かったのももちろん、デザイン的にも気に入った。でも一番は「黒檀」に惹かれたのかも…。黒檀(やグラナディラ)は個人的に"楽器の樹"のイメージだったりする。クラリネットやリコーダーの黒のイメージ。良い杖に出会えた。(なおマジックワンドだったが流石に一人で各所の仕組みを回る気力はなく、特に何もしなかった)






バタービールでひと休み。ここも結構並んだ。ホットが美味しい季節だった。キャラメルみたいな味?で普通に冬に飲みたい。今後バタービールの味を想像できるようになったのは大きい。

お土産を買い回りつつエリア内をぐるっと。カエルのショーや三校対抗試合のショーなんかも通りがかりで見たけれど人混みでほぼ何も見えなかったではある。フィルチの没収品店という設定の店が一番お土産類充実してたのがちょっと面白かった。

店員の親しみを込めてだったり世界観作ろうとしての一言に得も言われぬ歯がゆさを覚えて己のテーマパーク適性の低さを思い知る。でも流石にハッフルパフのマフラーを見て「ハッフルパフということはとても賢い…」みたいなことをいわれたらウウーンと思ってしまうわけで……。それはレイブンクロー……。

一通り満足して、程よく疲れ切って、お昼ごろには退場。旅行前には食事もパーク内で…とも思ってたけれども、パーク価格に強気にはなれずに諦めた。お土産は買いすぎた。


お昼はユニバーサルシティウォークで食べることに。とりあえずマックでささっと食べよっかなぁと思っていたところ、混みすぎていたので撤退。途方に暮れて案内板を見ているとたこ焼き食べ比べのフードコートを発見。せっかくなのでたこ焼きにすることに。

甲賀流のソースマヨとねぎポンのハーフ。美味しかったです。


USJを出て、次は大阪城…の前に、福島駅で降りる。

目的地はここ。

逆櫓の松跡。
平家物語の『逆櫓』で、景時と義経が言い争ったのがこの辺、とされている場所。道沿いにひっそりと説明板がある。

ここは前日、せっかくだしもっと行ける場所ないかなぁと検索していたときに見つけた。平家物語が好きなので、こういうのを見つけたら寄りがち。

逆櫓の松跡の隣には喫茶ウィンブルドンがある。このお店では逆櫓の松跡にちなんだオリジナルケーキを提供しているというのも他の方のブログで見かけて、これを食べるのも目的だった。抹茶味の生地であんこを包んだケーキ。甘すぎず美味でした。

他にもオリジナルケーキを色々とやっているようで、近場でやっている美術館の展示に合わせてモネをモチーフにしたケーキもおしゃれだった。オリジナルケーキを注文すると、売上から一部が能登地震義援金になるとのことでした。レトロな雰囲気で素敵なお店だった。

福島駅に戻り、いよいよ大阪城へ。天守閣と大阪歴史博物館のはしごを狙っていたものの、天守閣入場の列にこれは無理だな…と察して天守閣の方を諦めることに。

ここまで行っといて天守閣に登っていない、無計画すぎる。

本土のこういうお城に行ったのは多分これが初めてだと思う。大河ドラマ歴史小説で見ている色んなつくりや距離感がなんとなくわかって面白かった。


天守閣は諦めて、そのまま大阪歴史博物館へ。この時点ですでに15時過ぎており、絶対間に合わんなこれは…と察し始める。
二兎を追う者はなんとやら。



大阪歴史博物館難波宮跡に隣接しており、難波宮推しの展示という印象。難波宮大極殿の再現展示から難波宮跡を見下ろせるのが良かった。

難波宮舞台の歴史小説とかなにかあるかな、読みたいな~と思いつつ2フロアめに向かったがここでタイムアップ。閉館時間になってしまった。計画性が無さすぎる。

不完全燃焼感を抱えながら、隣の難波宮跡に寄っていくことに。

難波宮跡は公園として整備されている。柱や濠のあとにタイルや目印が設置されている状態。スケール感はわかる。

大極殿跡から公園内を見渡す。
ここに限らずだが、こうやって日本史の教科書にでてくるような史跡にいると、あぁ、本当に地続きなんだ、と感じる。沖縄にいると、正直(琉球が絡まない部分の)日本史も世界史もそんなに変わらない感覚だったりするから。どちらも物語の世界のようで、あまり実感がわかない。

大阪城の戦国時代も、難波宮の飛鳥・奈良時代も、確かに今につながる歴史であって、この足元の地面を歩いていた人たちがいるのだと、強烈に感じられた。


さて、荷物は大阪城公園駅のロッカーにおいてあるので、そこまで帰らなくてはいけない。歩きたくなくて大阪メトロ谷町四丁目駅から地下鉄で天王寺駅にいき、環状線で公園駅に戻る大回りをする。夕飯を天王寺で食べてから行こうか…と思いつつ、一日中歩いていたので体力は限界であり…。結局、大阪城公園駅のすぐ近くのタリーズでホットドッグを食べて、桜ノ宮駅に帰り、近くのローソンでパリチキとぬか漬けを買った。

3日目に続く。

【大阪旅行:2泊3日】〜1日目:近畿大を訪ねる〜

2月10〜12日、三連休を利用して初めての大阪旅行に行ってきた。

ここ数年、コロナの影響もあってあまりガッツリとした旅行はしておらず、全くはじめてのエリアに行ったのは多分5年ぶりくらい。最後は学生時代住んでいた茨城から離れる道すがら、鹿島神宮に行ったときだと思う。思えば学生時代にもっとあちこちに行っておけばよかった。


今回の旅行の第一目的は『近畿大学を見に行く』。今、司書課程は残りメディア授業の試験結果待ちというところで、手応え的には合格できている…と思う。特になにか手続きが必要だったりというわけでもないのだけど、せっかく学生証があるので、中央図書館とアカデミックシアターを一度見学に行きたかった。学籍が切れる前に…ということでこのタイミングで行くことにした次第。

それ以外の予定はほぼ決めず、あと2ヶ所くらい行きたい場所をぼんやり考えつつ飛行機と宿を押さえて、あっという間に旅行当日に。


今回の飛行機はPeachの朝イチ関西国際空港行き。朝イチといっても到着はほとんど12時前で、Peachは第2ターミナル発着なのもあって空港を出るまでに半日以上は過ぎてしまっていた。

まずはとにかく近畿大へ行こう、ということで、関空快速で鶴橋へ向かう。ここでJR西日本管内だということを思い知らされる(今更)。Googleマップを見ながら改札口を探したものの、駅ナンバリングの表示アイコンがJR東日本とは違うということに思い至らず、JRじゃないんだな~とぼんやり思いながらウロウロしてしまった。ようやく気がついたあとも無意識に緑色の看板の類を探してしまい、未知の土地だ…と慄きながら(?)関空を脱出した。


鶴橋までは1時間くらいかかった。ぼんやり車窓を眺めていると、家のつくりや遠くに見える山の高さに、あぁ本土に来たんだなぁと実感が募る。

電車内で堺市博物館の広告を見つけた。古墳気になるなぁと思ったところで堺市駅につき、通り道ならということで帰りに寄ることをここで決めた。計画性はないがその分融通はきく。


鶴橋で近鉄大阪線に乗り換え、長瀬駅へ。長瀬駅は思っていたよりも小さくて、大規模な私大の最寄りでもこんなに小さい駅なんだなぁと驚きつつも、そういえば駒場東大前駅なんかも小さかったよねぇと謎の思い出しをしたりもして。


時間はもうすでに14時。本当は学内で土曜も営業しているラーメン屋・近大をすすらんか。に行きたかったのだけど、営業時間に確実に間に合わないので大学通り周辺の飲食店に入ることに。











近大前商店街から西門が見える。

休講期間の土曜だから人はかなり少なかったけれど、授業のある日は学生でごった返すのだろうなぁなどと思いながら歩く。

角の古本屋、気取らない飲食店、飲み屋に雀荘。母校の周辺とは全く違う密度の高さの学生街の雰囲気がよかった。

お昼は道中の麺屋こころへ。結局チェーン店に入るんかい、というところだけども松屋に入らなかっただけで褒めてほしい、塩まぜそば美味しかったです。

まぜそばで学生気分になったところでいよいよ近大へ。


これは帰りがけのときにとった写真だけど、学内はかなり綺麗という印象だった。ただ、構内の案内図的なものはちょっとわかりづらく…。



目的第一、中央図書館。10階建てほどの細長い茶色の建物。

1フロアずつがかなり狭いことに驚いた。そこらの大きめの教室くらいかな?という広さの中に、通常の書架と集密書架とが並んでいる。そんな感じのフロアが約10階分。キャンパス内各所に分野ごとの分室があるとのことだったから、学生はうまく使い分けているのだろう。

図書館情報学関係の棚も流石に広めで、ざっと背表紙を見ていると、やっぱり今後ももっと勉強したいなぁと思ったりした。たとえ司書や図書館員を仕事にはできずとも、せずとも、もうちょっとこの勉強をしてみたい。その先に仕事があれば尚良い。もう少し足掻いてみようかなと思えて、このためだけでもここに来てよかったと思った。

図書館情報学関係以外でも、あの本もこの本も読んでみたかった。大学時代に図書館の本をあまり読めなかったのがものすごく悔やまれる。どうにかこうにか大学図書館を自由に使える状態にしておきたいので、色々と県内でも調べて見る予定。


次はアカデミックシアターへ。
これはアカデミックシアターの中にいたマグロ。




目的はビブリオシアター。
https://act.kindai.ac.jp/biblio-theater.html
印象としては博物館・美術館の展示や、図書館の展示の大規模版、という感覚を受けた。近大INDEXによる分類って実際どんな感じだろうと思ってたけれども、なるほどなという感じ。分類や分野の枠を超えてテーマ単位で集められた本たち。公式サイトの説明に書かれている通り、まさしく「実学の礎としてのリベラルアーツ」の思想をひしひしと感じる象徴的な空間でもあった。ただし方向音痴は迷子になる。

ふと目についたこの本を閉館まで読んでいた。

いよいよ百舌鳥古墳群に行きたくなる。三日目に絶対行こうと決めた。







18時に閉館。長瀬駅に戻り、そのまま宿へ。近大前で夕食を食べようかとも思ったけど、移動でかなり疲れてしまっていて、とにかく一回チェックインしてしまおうとスルーしてしまった。この選択は後々後悔することになる。


今回の宿は大阪環状線桜ノ宮駅京橋駅の間の、東横INN京橋桜ノ宮桜ノ宮駅自体は小さいながらも環状線の駅ということで交通の利便性は高かったものの、ホテルまでは結構距離があり、しかもホテル周辺はラブホ街(治安は悪いという感じではない)、コンビニも近くはなくて、正直不便だった。これは口コミ見ればわかることではあったので私の無計画さが悪いです。ホテル自体は東横INNなので間違いはないです。

京橋駅の方まで出る体力もなく、この日は這々の体で行ったコンビニで適当に買ったサラダと巻き寿司を食い、缶チューハイを1缶開ける。

2日目に続く。

読書体験を最高にするための儀式


これは昨日食べた星乃珈琲のスフレパンケーキ。

昨日はパンケーキを絶対食べると決めていた。なぜなら図書館で"Nate the Great"シリーズを読むと決めていたからだ。

ハードボイルド(風)探偵Nateの大好物はパンケーキ。ちらりと見かけていた感想からパンケーキが食べたくなる本だろうなと予想がついていたので、図書館に行く前に先んじてパンケーキを食べていたというわけ。ちなみに大正解だった。


こういう風に、読書体験を最大限最高にするための儀式のようなものをするのが好きだ。儀式のように本を読むのも。


一番シンプルなのは今回のNateとパンケーキのように、作中に出てくる食べ物や飲み物を用意すること。

例えばThe Thiefを読んでいた間はどうしても食べたくなってオリーブの瓶詰めをわざわざ買ったり、朝食をヨーグルト・パン・チーズで固めたりしていた。

ただしこの方法は作品によってはぐっと難易度が上がる。例えば『月神の統べる森で』を読むとジビエかドングリやユリ根が食べたくなるが、なかなか気軽には揃えにくい。レイ・ブラッドベリ『たんぽぽのお酒』もたんぽぽお酒ってどんな味なんだろう…とずっと想像している(ただしこの作品はアイスクリームやレモネードでも最高になれる)。

作中に特に印象的に出てくるわけではなくても、「この作品を読むときはこういう飲み物を合わせる」みたいなペアリング(?)もあったりする。DWJ作品、特にクレストマンシーを読むときはサンドイッチとミルクココアか紅茶がいい。ル=グウィンを読むときはなんとなくコーヒーが良い。長野まゆみ作品はサイダーの気分になりがち。

ル=グウィンの『ゲド戦記』『西のはての年代記』を読むときは、ついつい環境にこだわりたくなる。季節は冬がいい。座り心地の良い椅子の上に身を丸めて、毛布を巻き付けて、サイドテーブルにコーヒーを置く。静かにイヤホンで手嶌葵の歌をかける。外は曇り気味がいい。特にゲド戦記は沖縄で読むのと関東で読むのとで体感が違う、多分きっと潮の気配のせい。


儀式的に読む本の代表がレイ・ブラッドベリ『たんぽぽのお酒』だ。この本は夏の間に読むのが一番良い。エアコンを入れない暑さの中で、汗をかいたレモネード、合間合間にアイスクリーム。少しずつ読み進めるのが一番最高だろうけど、だいたいいつも夏の終わり頃に読んでいる。ダグラスといっしょに夏を終わらせる儀式をするのだ。ブラッドベリは他にも10月頃に読みたくもなる。



あまり儀式をガチガチにやろうとしすぎると逆に本が読めなくなってしまうのでほどほどにしたいなとは思いつつ。この読書の体験づくりがぴたっとハマった時、なにものにも代えがたいしあわせがある。

Megan Whalen Turner『The Queen of Attolia』(Queen's Thief 2)

どうにかこうにか読み終えました、2巻。
シリーズものはまとめて感想を書きがちだったけど、流石にこのシリーズは1冊ずつ書くと思う。なんせ約半月かかって読んでいるし、英語多読の記録も兼ねて。


アドベンチャーの1巻とはずいぶん雰囲気も打って変わって、政治と戦争を巡る第2巻。確か日本語での初読のときも、全然違うじゃん!とびっくりしたのを覚えている。語り手は「おれ」じゃないし、開始すぐに右手を切り落とされるどん底スタートなのが衝撃的だった。

1巻は前半がプラスに向かう雰囲気の比較的明るくライトな冒険で、50%付近で急転直下悪くなるという感じのストーリー構成だが、2巻は前半でいきなりズドンと落ちて苦しい展開が続き、50%付近で状況の変化が起きる。日本語でも前後編にちょうど分かれているところのはずだけど、命令が「アトリアの女王を盗んで」に変わるところ。そしてこの命令が、最終的に二人が結婚するところまで繋がっていく。アトリアの女王の物理的な誘拐はナフレセシュ(とそれを導いた神々)によって失敗するけれど、最後の最後、エウジェニデスは真の意味で女王の心を手に入れる。

2巻は印象的なシーンが多い。
例えば手を切り落としたあと、アトリアの女王が「割ってしまったお気に入りの髪油の壺」を思い出すところ。目の前の不可逆的な傷に重ねるのがその幼少期の記憶なのに悶絶するが、後半に行くにつれてそれがただの物理的な喪失の記憶なだけでなく、イレーネの幼少期の終わりと石の仮面の誕生に繋がっていく決定的な終わりの象徴だったのだと気付かされていく。これは中盤、自分を誘拐しに来たエウジェニデスがすっかり変わってしまったのだと思うところと、最後のシーンで自分の石の仮面がもう自分と不可分になっているところまで貫かれるイメージになる。

何かを失った時、何を得るのか。何かを得た時、何を失ったのか。それぞれの獲得と喪失の物語。

エウジェニデスは右手と自由を失って、最終的にイレーネの愛と2国間の平和を得た。
イレーネは幼少期の頃のようには戻りようがないが、アトリアを自ら治め守るだけの力とエウジェニデスからの愛を得た。
ヘレンはエディスの盗人を失って、アトリアとの平和と予知された破滅を避けるための布石を打った。

他にも、ソウニスに帰れなくなったメイガス。へスピラの挿話。エウジェニデスが盗んでは祭壇に捧げてきた(二度と取り戻せなくなった)ものたち。失われた命たち。振り返ればあちこちにたくさんの"喪失"が散りばめられていた。かわりに何を得たのか、それともそれは本当に不可逆的喪失なのか。過去一この巻をしっかりじっくり読めた気がしている…。


英語の面。
1巻から立て続けに読んでいるので、引き続きよくでてくる単語も見慣れてきてぱっと意味が取れるようになってきた。そういう点では1巻よりも楽に読めたと思う。若干の成長を感じる。

1巻に比べるとぐっと政治的な話が増えてくる分、内容的には難しく感じる。細かい戦況や策略は正直結構飛ばし読みをしてしまった。日本語でもぼんやりしか覚えてないし…。

それでもストーリーの機微は味わえるぐらいには読めていたし、何よりおまけの未邦訳短編"Knife Dance"を読めたのが本当に嬉しかった。ごく短編だけどもこの先未邦訳巻にたどり着けたらこんな感じなんだなと想像できたしモチベーションもあがる。こういうちょっとした本編の狭間の話、大好き。

Knife Danceの登場人物たちの喋り方が本編の登場人物たちのセリフとはだいぶ感触が違うなというのもばっちり感じられて、こういうところでキャラ性を感じるんだなぁと思うなど。

多読の記録としてはこの本で約10万語を稼ぎ、トータルでは35万語ぐらいになっている。GRはOBWのlv.2に入りつつ、合間合間でMTHを読み進めているところ。

通勤時間に読む枠としてのQueen's Thief読み進めはここで一旦休止して、Oxford Reading Clubを今日はじめた。噂のORTをざーっと1ヶ月のアクセスコードで読み切ってしまおうかと。

一応もうOBWのlv2読めているんだから今更ORT読む意味ないのでは…?と思わなくもないんだけど、MTH読んでいるとやはりネイティブ向けのもう少し易しいところで積み重ねてたほうがいいんでは?と思う部分も若干あり。スピードアップにもなればいいなぁという思いでひとまず1ヶ月やってみます。ORCについてはまた別で感想を書きたい。

3巻"The King of Attolia"を読むのは少なくとも多読語数が50万語を超えてからにするつもり(Queen's Thiefで稼いでしまった17万語ぐらいは除外して…)。ほかの簡単めの児童書ももっと開拓していきたい。

英語児童書を取り入れ始める

多読継続中。
Queen's Thiefの2巻"The Queen of Attolia"もGRと並行して読み進めているけど、流石に実力不足を痛感する。ストーリーの流れはわかるものの、戦況の説明や細かい策略の解説はだいぶわからない。

このままでは確実に未邦訳の4巻で挫折しそうなので、読了したら一旦休みを挟んで、もう少しレベルを下げた児童書にチャレンジする予定。

「多読用」のGR類は主に図書館で借りている。GRは本として読みたいから読むというより読み捨ての感覚がどうしても強めで、買わずに大量に読める図書館はかなりありがたい。

多読サイト等でよく紹介されている児童書類も揃っているので、最近はそちらにも手を出し始めている。現在はMagic Tree Houseを読みすすめ中。レベル的には日本語児童書だと『かいぞくポケット』とかと同じくらいの手応えかなぁ?という内容で、シンプルだけど程よくワクワク読める感じ。

児童書とGRを交互に読むようにしている。児童書はGRに比べるとやはり文章が自然で、わからない単語も結構あるものの、テンポよく「読書」の感覚で読めている。

一方でどうしてもまだまだ内容が物足りなさがあるので、モチベ維持のためにもKindleで辞書引きを解禁しながらQueen's Thiefを読んでいる部分もある。

この背伸びポジションの本は「日本語で読んで面白いとわかっている」「Kindleで出てる(辞書引きと通勤時間に読むために)」の2つを満たしている必要があるのだが、ここに「今のレベルでももうちょい読める」を加えると意外とぱっと見つかるものがなく。

今のところ読みたいと思っている児童書類は↓のような感じ。

デルトラ・クエスト
ダレン・シャン
アルテミス・ファウル
バーティミアス
ハリー・ポッター
・DWJ作品

日本語で読んだ感覚的にはこの中だとデルトラが一番簡単なイメージなのでここから手を付けようと思ったら、なんとamazon.co.jpでは英語版Kindleが買えなかった…。少し調べながらamazon.comの方で買おうとしてみたけど、結構面倒くさそうだったので一旦諦めてしまった。ペーパーバックを買ってYL5くらいのGRに突入した頃に今のMTH枠で読むかも。

そうなると次はダレンかな〜でもダレンを読めるイメージが今のところあんまりないな…と逡巡中。

amazon.comでのKindle本入手、もしくはちょうどいい難易度の英語児童書情報、募集中です。

Megan Whalen Turner『The Thief』(Queen's Thief 1)

英語多読を始めたきっかけの本、Queen's Thief(盗神伝)シリーズ。
多読をもっと進めてさらさら快適に読めるようになってから…と思っていたけれども、結局我慢できなくて読み始めていたら、ついつい最後まで読み進めてしまった。それぐらいの引き込まれてしまう、どんどん読み進めたくなるワクワクする作品。

地中海風の世界を舞台に繰り広げられる政治と策略、そこに絡み合う神話と信仰、そして愛。元々ギリシャ神話が好きなのもあって世界観が好きなのはもちろん、主人公を筆頭に個性豊かなキャラクター達とそのウィットに富んだ語り口、そしてあっとおどろく展開の数々。小学校の図書館で出会って以来大好きで、何年待っても原作4巻以降の邦訳が出ないのにやきもきしていた。

特にこの第一巻は、読書体験そのものが面白い。
以下、大量にネタバレを含むので、少しでもこれから本作を読む可能性がある人は以降の文章を読まないでください。
結末を知ってから読んでも相当面白いけれど、初見の感覚には何物にも代えがたいものがあると思っているので。
ぜひぜひこの作品がもっと読まれて、今からでも邦訳の続刊が出てほしいと思っています、よろしくお願いいたします、あかね書房さま、金原瑞人先生、宮坂宏美先生。



第一巻の読書体験のおもしろさをひきたてているのは、信用できない一人称による語りだと思う。
ディズニーでの映像化のニュースが2020年に出ていて、見たさはあるものの、正直映像化するとおもしろさがもったいないんじゃないかな…という感触がある。
eiga.com
(本当に映像化が実現するのかは分からない…バーティミアス、どうなった?アルテミス・ファウルは実現したけど見れていないし、ダレン・シャンは残念だった…)
この巻はずっと、主人公の一人称で語られる。ただし、この主人公は名乗りもしないので、その正体はなかなか明かされないことになる。
このやたら自信満々なのに投獄されている主人公は何者なのか?その目的は何なのか?それがわからないままに読み進めていくうちに、メイガスによって「どこで、なにを盗むか」も一切分からない冒険の旅に連れ出されることになる…。
主人公の語り口は軽妙で、この謎だらけの旅を飽きさせない。疲れた腹が空いたとすぐに文句を言い、乗馬はへたくそで、しかし地の文では同行者たちについてしっかり観察し、どうやらメイガス達が思っているだろうよりは強かでこれは何かがありそうだぞとワクワクさせられる。
この一人称の語りは、文章であることでよりその威力を発する。オーディブルは確認できていないのだけど、この作品を朗読しようとすると、主人公の地の文は普通に明瞭に、一方で主人公の台詞は口を半開きにしたり語頭のhを消失させたり語末をあやふやにしたりといった“育ちの悪さ”の演出をいれたくなる。主人公の発音に癖があるのは作中で同行者たちに指摘されることだが、文章で読む限りではそれらは表現されていない(はず…ネイティブ的に英語のニュアンスがあるとかだったらわからない)ので、言われるまでわからないのだ。もちろん、一人称の朗読でも地の文は台詞とはわけて普通に読むというのは当たり前にあり得ることではあるけども、この主人公の口半開きしゃべり自体がそもそも演技、というおもしろさは文章媒体が一番面白いと思う。
また、主人公は全部を語ってくれるわけではないので、後から「あのときくすねておいたナイフ」とかがポケットからばんばん出てくる。これも「あの場面でいつ盗ってたの!?」というおもしろみがあるわけだけど、映像でやるとなると実際に盗んでたはずのカットを挿入するか、使うシーンでちょっとわざとらしい台詞をいれるかしかないのでは?どちらにしても興ざめ感があるし、この「いつ盗ってたの!?」は最後の最後、ハミアテスの贈り物を実はメイガスから盗んでいました、というのが最高潮なので、なかなか難しいと思う(ハミアテスの贈り物を盗んでた場面については結構わざとらしいので初見で読んでても察しがつく気がするけど、初見の記憶がはるかかなたすぎて覚えていません)。
そして物語の最後、この一連の物語自体が、エウジェニデスが書き起こしたもの…という含みを含めた枠の提示で終わる。楽しい。


書評などを見るとひねりのあるプロットがよく褒められているようで、実際今回読み返していて、ストーリーの構成がしっかりしているのもおもしろさの秘訣だろうなぁと感じた。
物語の当初の表面的な目的である「ハミアテスの贈り物を手に入れる」が達成されるのが作品のちょうど50%付近だと気づいたときにはうなってしまった。謎の旅の間で高められたワクワクはここで最高潮の緊張の高まりを見せ、一旦解決を見せる。

が、しかしすぐにハミアテスの贈り物は彼の手を離れてしまい、そこからはとにかく最悪の方向に事態は転がり落ちていく。食糧はすっかりなくなり、アトリア兵に襲われて、ハミアテスの贈り物はメイガスの手どころか永遠に失われてしまう(と思わせられる)。その時のことがきっかけでかなりマシになっていたメイガスとの関係性も再び最悪になり、やけっぱちメイガスによって危険な空き巣・夜盗をさせられる(そこら辺のこそ泥ではなくエディスの女王の盗人なのに!)。この頃からとくに強調される「おれは人殺しじゃない」という態度も、2度目の襲撃の際に地に落とされることになる。そして重傷を負いながらついにアトリア兵につかまるし、その時裏ではアンビアデスの裏切りの発覚、ポルの死がある。そしてアトリアの砦で死の淵に瀕する…ここがどん底

その後、朦朧とする意識の中で神の方のエウジェニデスの声を聞いて再び動き出す。ここからがクライマックスのお楽しみ。物語の冒頭では王の牢獄から自力で脱出できなかったことを散々こすられてきたエウジェニデスは、自分どころかメイガスとソフォスをアトリアの牢獄から“盗んで”しまう。道も見失うような必死の逃避行…のように見せかけて、その実意図的にエディスにたどり着いてしまうのだ。そこからはこれまでの謎の答えが次々と明らかになるのがとにかく爽快。主人公エウジェニデスの正体、メイガスがハミアテスの贈り物なんていう神話の遺物ににこだわろうとした政治的理由。ソフォスが実はソウニス王の世継ぎだということをエウジェニデスが知らなかった場面がさらにひとひねりあって楽しい。


とにかくこの本は読んでて楽しかった。まるでテーマパークのアトラクションひとつのったかのような、そういう類いの楽しさがある本。娯楽としての読書の楽しみを感じられる本だと思う。同じような感覚を覚える本としては冲方丁の『十二人の死にたい子どもたち』なんかがある。
英語さえ読めれば最終巻まで、さらには短編集までたっぷり読める!本当に楽しい読書だった。



さて、多読としてはどうかというと。正直「読めた」というのはおこがましい程度の理解ではある。
この作品の邦訳はすでに4.5回読み返しているので内容をほぼ記憶しており、単語を拾うだけでストーリーは脳内で再生されてしまうから、理解してなくてもページをめくれてしまう。この調子だと邦訳されていない4巻以降はまた挫折してしまいそうな気配があり、やっぱり基礎力をつけないとな…と再確認したところ。
ただ、GRだけでなくページ数多めのYAを一冊通しで読んだのは役に立ったと思う。一応読み終えたという達成感はあるし、何度も何度も同じような単語が出てきやすいので、いくつかこの読書を通じて確かに意味が取れるようになったなという単語もある。“排水溝のゴミ”とかありとあらゆる表現での顔のしかめ方とかだけど…。冒険を通しての自然物の表現が多かったのも勉強になった。あとは馬具とか。なるほど多読を相当量していけば確かに語彙はある程度増えそうだな、と手応えを覚えられた。
それと、The Thiefはこれくらいの手応え、という目安がついたので、じゃああの本やあの本だと対象年齢も低いしもっと手軽に読めるのかな?とか、思ってたよりハリー・ポッターだって難しくないんじゃないか?と思えるようになった(lexile指数でいうと賢者の石の方が簡単らしい)。

これで、約20万語近くの多読をしたことになる。
効果としては、少なくとも大量の英文を目の前に提示されてもあまり拒否感を感じなくなった点があげられる。とりあえず読んでみよう、と目で追えるようになった感がある。The Thiefに比べたら全然文字数少ないじゃんと思える。
単語をかたまりとして理解して読めるようになってきた感じもする。実際、日本語で本を読むときには一文字一句詠んでいるかというと、単語は結構塊で視認して実質読んでない節がある。そんな読み方をしているので例えば「シクイルケ」を「シクルイケ」、「アテルイ」は「アルテイ」、「シェーラ」すら「シェラー」(!)みたいな読み方をしたまま数年数回同じ本を読んだりしていたわけで。それが英語学習的に良いか悪いかは別として、読書スピードは若干上がってきたと思う。フォニックスはもっとまじめにやった方が良かったかも知れない。

Queen's Thiefシリーズを全部読めば、だいたい60万語程度になるはず。少し難しくても楽しんで読めるのは多読としてありかな。好きなあの本もあの本も原作で読めるようになる確かな手応えとともに、多読を継続していきたい。