つかのま。

読書と日々考えたこと

墨香銅臭『天官賜福』1〜3

ちょうどいいタイミングで邦訳版3巻が発売されたので、一気に3巻まで読了。

ネットで注文してから手元に届くまでの間にアニメも2期まで見たので、そちらもあわせて3巻まで時点の感想をば。

いつものようにネタバレありのブログですが、この作品もネタバレなしでジェットコースターを楽しむのが良い作品だと思っているので、よろしくお願いいたします。(3巻までしか読めてないのでネタバレ範囲もそこまでです)




同作者の『魔道祖師』よりもさらにファンタジー色が強めな印象のシリーズ。主人公たちは800年生きて(?)いる神と鬼。世界観や「神」の設定は道教的な雰囲気がベースなので、道教関係の本もあわせて読んで解像度をあげている。

アニメは原作をかなり丁寧になぞっていて、2期計2クール分で原作だと2巻の前半までしかカバーしていない。全6巻なのにすごいペースである。流石にアニメで完結させる気があまりないのでは…?と思ってしまうが(サブタイトルも決め台詞的なもので締めちゃってるし)、その割にはアニメ用の再構成なんかもあまりないので、アニメ単体で見ると回収されてない謎が残ったりする。やっぱり誰かにこの作品をすすめるなら小説から…になるかなと思いつつ、原作のなぞり方は相当丁寧でアニメとしてもずっと画面が綺麗で良いので、アニメから入ってもらうのも有りかも。


アニメを見てた時点で気になっていたキャラは郎千秋と風師(師青玄)。あと慕情。

明らかに太子殿下への複雑感情を拗らせている慕情はアニメでの表情が面白く、この人の拗らせ感情をもっと知りたい…というタイプの気になり。過去編での少年兵のあたりでふと察したのですが、花城との因縁もあるな…?苦しい状況で殿下に見出されて救われて、という境遇がわりと似ている二人。3巻までではまだ深淵を覗いていなさそうなので今後が楽しみ。

風師と千秋についてはもっと素直というかシンプルに「好ましい」という感情を抱くタイプ。こういう、明朗快活めの義侠心あるキャラクター、好きなんです。大概ある曇らせ展開とそこからの立ち上がりも含めて…。セオリーどおり(?)曇らせはあった。立ち上がりがあるのかないのか、それが問題だ。

アニメでは郎千秋が心配な状態のまま終わってしまい、さらに原作では少なくとも3巻までは特に進展がないんだけど、彼についてはなんだかんだ大丈夫な展開なのでは…?とまだ期待を持ってみている。魔道祖師でも江澄や金凌は大丈夫だったので。千秋の問題は原因に太子殿下が関わっているので、解決しないとちょっと後味悪いよねというのもある。

千秋の真っ直ぐさがわかる台詞が好き…。「私が飛び出さなければ、他に誰も飛び出さなかった」とか、「友なら騙してはいけない」とか、「貴様のように恨みや憎しみに支配されたりはしない」とか。千秋がこうも真っ直ぐ育ってくれて嬉しかっただろうな、殿下。だからこそ殿下は千秋にそのままでいてほしい、何も知らず…と思ってしまうけどそんなことを許せない花城。

実際、「無知ゆえに正しい相手を恨めない」というのは千秋にとっても悲劇寄りだよなと思う。芳心国師一人を悪者にしてもう復讐も果たしたからこれで終わりとしたとして、一方で本当は恨むべき安楽王のことはずっと親友だと思ってて。安楽については殿下がケリを付けたけど、お互い知らぬところで戚容は何の咎めも受けていないし。そんな状態に千秋を留めおこうとしてしまうのは殿下のエゴだよなと。真実を知ったら千秋は余計に苦しむんじゃないか、というのも千秋を舐めてるともいえる。真実を知ってそのうえでどう生きるのかを選ぶ権利は千秋にある。

このあたりから過去編にかけて太子殿下の『問題点』が浮き彫りになってくる。衆生を救いたいというある種の傲慢、行き過ぎた自己犠牲。しかしその太子殿下の傲慢さ故に救われて800年想ってきた花城。

殿下、本気でこの時点でまだ全然過去の子供と花城が結びついてないんですか…!?紅紅児→廟の少年→少年兵ですらあやふや(全部花城ってことですよね??)な描写だったのでそういう人なのかもしれない。南風と扶揺についてもピンと来てないっぽいので…???天官賜福、『本当の姿』的なものをあちこちで描いてくるなという印象。


話は戻して、もうひとり気になっていた人、風師青玄。曇らせがあることについてはずっと警戒していたけれども、ここまで多段階でおとすとは思ってなくて…。3巻読み終わってからじっと青玄と黒水のことを考えている。正直彼が立ち上がる未来は見えてないです、ここから入れる保険はないと思います。藍曦臣という前例を思い出している…。

青玄に辛い展開があるとしたら兄か親友に裏切られるパターンだろうなとぼんやり思っていましたが、答えは「両方」でした。裏切りというかなんというかだけど。

愉快で明るくていい人な風師が白話真仙に本気で怯えているだけでも若干の曇らせが入っているのに、そこから攫われ、法力奪われ、兄のやらかしを知り…。ここでもう十分だよ!!と思いきや、さらに明かされる「明兄」の正体。そして兄の最期。もうずっとやめたげて〜…と思いながら読んでいた…。以来ずっと黒水と青玄のことを考えている。

ああいうことにならないための最後の岐路は、一度逃げ込んだ雨師のところから水師のもとに行くことを選んだところだったのかなと思う。青玄があそこで水師を選ばなければ黒水はひとりで水師を始末しにいって、その後は何も言わず正体も表さずだったのかも。

でもそのルートでもどうしたってもう本物の地師は死んでて、青玄の親友は最初からずっと賀玄で、どうしようもないんだよなぁ…という。私たち読者が知ってるいっぱい食べる「明儀」も、全部全部賀玄なわけ。本物の明儀は本編開始前に処理済みです、ならまだしも、半月関編が終わる頃までは一応生きているらしい。逆に辛い、私たちは何も知らず賀玄を「明儀」と呼んでいたのに。

水師を責めるなら、黒水が地師にやったことはどう違うんだ、という問題にぶち当たる。自力で飛昇した地師に成り代わってこれまで過ごしてきたのに。地師を殺さないで置いていたのはそのへんの意図もあったりしますか?花城は一応「本物の地師を殺したのが黒水かはわからない」旨を述べている…。


ずっとぐるぐる考えていても4巻以降はまだ日本語で読めないのでどうしようもない。今、繁体字版を集めているところ。中国語勉強します。

ヴァンサン・ゴーセール(他)『道教の世界:宇宙の仕組みと不老不死』

墨香銅臭作品を読むにあたって、道教的な背景知識をもう少しわかっておきたいなと思って図書館で借りてきた本。

写真や図版が多数掲載されており、古代から現代に至る道教の概観についてさらっと雰囲気をつかめる入門書。

あまり個々のトピックについての深堀りはないが、ざっくりと全体感はつかめたと思う。

著者がフランスの人ということで、西洋的な視点から書かれている部分もあるのかなと思う。日本(とくに沖縄)だとなんとなく感覚的に近しいものがあるんだけど(例えば土地神なんかは土帝君か、とわかる)、もう少し俯瞰的というか。そういう意味でも入門書としては良かったかも。



特に印象的だったのは最後の方に載ってた『茅山志』の徽宗のお手紙がなんだかよかった。徽宗自体が元々歴史上人物として印象的な人だったというのもある。機会があればこのあたりもうちょい深堀りしておこう。



並行して『天官賜福』を読んでいた。こちらは『魔道祖師』よりも道教ベースの事物が多めに出てくるが、この本を読むとなんとなく解像度があがった気がする。例えば霊文がたくさんの文書に囲まれてるのは、信者からの祈願が文書の形式で届けられるからなんだなぁ、とか。廟と道観についてとか。道教の「神」の感覚とか。



道教関係ではもう一冊詳しめの本を借りているのと、岩波文庫の『老子』を買った(太子殿下が時々道徳経の名前を出すから…)。ちまちま読んでいく。

中国語学習

先日来の中国語学習欲の高まりを受けて、ちょくちょく勉強をはじめている。

というのも、『魔道祖師』からの流れで同作者の『天官賜福』や『人渣反派自救系統』にも手を出してしまっているのだが、これらは日本語訳が完結していないので今すぐ全編読むためには別言語で読むしかない。

英訳なら英語多読の延長である程度読めるのはわかっているけど、せっかく漢字圏の人間なのに一回アルファベット経由するのもなんだかなぁ~と思ってしまい、この機会に腰を据えて中国語を勉強して、繁体字版で読もうと思った次第。


実は中国語に関しては全くの初習というわけではない。高校で1年履修して入門部分くらいは習ったのと、その後も折に触れて初級文法を軽く独学したりはしていた。

とはいえあまり目的意識もなくやっていたので、それほど定着もしておらず。ただ、今回は明確に読みたい本が目の前にあるから、相当頑張れる気がしている。英語多読も「盗神伝の続が読みたい」でここまで続いているし…。オタクの欲望はいいモチベーション。


今のところ取り組んでいるのは以下の通り。


東京外国語大学言語モジュール
東外大言語モジュール|中国語
言わずとしれた東外大言語モジュール。お世話になっております。
文法モジュールの「徹底実力養成コース」全24課を一通りざっと通した。

マスターしたかというと否だけど、とりあえず「基本文法」の全体像は把握できた。言語モジュールは概観を掴むのに適していると思う。

②Duolingo
日本語→中国語コース。こちらは以前から時々進めていてほぼ一周済みだった。

Duolingoだけだとなかなか遅々として進まない感じがしてキツいのだが、言語モジュールで全体像を掴んでから取り組むと、練習問題として定着に使える。音も入れられるのもいい。

日本語→中国語コースが終わったら、英語→中国語コースもやろうと思っている。


③『WHY?にこたえるはじめての中国語文法』

言語モジュールの次に取り組むちょうどよい文法書はないかな?と探していたところ見つけたもの。評判がよいみたいなのでチョイス。

初級者向けの文法書という体ながらかなりガッツリめの分量で良さそう。一周通したらまた記事を書きたい。

④『新HSK1〜4級単語トレーニング』

せっかくなのでHSK4級も取ろうと思って。
whyにこたえる〜があれば単語帳は不要かな?とも思ったけど、この本はテーマごとに単語を分類してくれているので使いやすそうだった。

HSK4級はリスニングが課題。今回の語学の目的からするとリスニングはあまり必要ないのだが、旅行でも使えるようになりたいよね。勉強します。



急に中国語熱が来ているけど、英語多読も続けている。そろそろMTHが読み終わるのと、Kindle枠ではWorst Witchシリーズを読み進めている。

どれも目標決めて進めていきたい。

墨香銅臭『魔道祖師』

先日の台湾旅行後からガツンと来ている魔道祖師。ようやく原作日本語版を番外集まで含めた全編読了したので、アニメ・ドラマ陳情令含めて感想を書いておきたい。

感想なので思いっきりネタバレしますが、この作品は前情報無しで初読するのが楽しかろうと思うので、これから作品に触れる予定の方は回避推奨です。ちなみに初見におすすめなのはやっぱり原作小説だなという所感です。原作を読もう。



古代中国モチーフの中華ファンタジーBL小説。
こういう世界観は元々好きなので、多分この作品も好みだろうな…という気配はずっと感じつつ、きっかけがなくて触れてこなかったのが、今回旅行をきっかけに見始めたら案の定相当好みだった、という流れ。

履修順はアニメ(Q含む)→陳情令(乱魄・生魂含む)→原作小説。この間約1ヶ月。ラジドラも聞きたさがありますがまだ日本語版は完結してない?ぽく手が出しにくい。

アニメ初見時には全然キャラが覚えられず…。みんな名前が3つくらいあるし(名・字・号・愛称敬称…)、姓は被りまくってる上に名前も似てるし(子淵、子軒、子勲、子真、子琛????)、服も似てるし…?例えば思追と景儀、正直初見時にはだいぶ後半までどっちがどっちか覚えられなかった。

乗り越えるためにネット上で相関図やキャラ紹介をチラチラ確認しながら見ていて、おかげで鬼腕の正体や黒幕についてネタバレを踏んでしまい。特に黒幕のことに驚いてどゆこと???と思いながら一気見をしてしまったのである意味良かったではあるんだけど、もったいなかったな〜!と思う。お試し感覚でアニメ見るのではなく原作小説を一番最初に読むべきだった。

各媒体の中ではやっぱり一番原作小説が面白く、かつわかりやすい印象を受けた。元々BL小説なのをメディアミックスだと要素排除されてしまうからというのも大きいと思うけど、それにあわせた(?)再構成でわかりにくくなってる感じ。

特に大きい変更が、ストーリーの構成だ。
原作だとあくまでメインは現代軸で、その流れに合わせて回想等で過去のシーンが描かれるという構成。過去軸(座学〜乱葬崗)は細切れに明かされ、現代軸での魏無羨と藍忘機の状況・関係とリンクしている様がわかりやすい。特に金鱗台から二人で逃げるシーンと重なる過去のドン底一人ぼっち状態は胸熱。そして過去と今の対比に感動してたあとに知らされる忘機の戒鞭の理由…。

一方で、アニメと陳情令では過去軸をまとめて展開している。わかりやすくするためなのかなぁ?とも思うけれども、正直この構成変更が物語をわかりにくくしてるんでは?という気がする。

ひとつには、現代軸での事件の流れが途切れてしまうのがわかりにくい。

この物語のアクション面での目的は「事件の発端になった鬼腕の正体と下手人を突き止める」なのだが、この正体探しがいよいよ始まったぞという大梵山後に一気に過去編をやってしまうので、過去編が終わる頃には現代軸で何やってたんだっけ?になってしまう。ちなみにアニメだと1クール分くらい過去編をやり続けている。

しかも、この過去編で出てくるメインの敵・温氏は現代軸ではほぼ絡んでこない。逆に、本編のメインの敵である金光瑶は過去編にほぼいない(陳情令はここはうまくやっていて、孟瑶の聶氏所属時期を早める・主人公たちを過去で清河に寄らせるをやっている)。原作だと金光瑶の名前は最初の方からずっと出ているし、本人の登場もそんなに後ろの印象はないタイミングだ。

現代軸に戻ってもまだこれから祭刀堂…という段階なので、原作だと効果的だった過去と現代の重ね合わせが途切れてしまうのがもったいない。話数がかなり進んだ状態で初登場になる義城組や欧陽子真も急にここに来て新キャラが!?感がある(特に暁星塵と宋嵐の眼のやりとりはまんま魏無羨と江澄の金丹のやり取りなので、どこに置くかで結構印象が変わる)。

過去編でみても、過去編内の時間間隔がわかりにくいというのもある。座学〜乱葬崗で原作では実は7年くらいの幅があるわけだけど、ぶっ通しで過去編を見ているとその感覚がいまいちわからなかったりする。原作は細切れなので時系列が連続してないことを理解しやすい。



原作では過去編が忘羨の関係値を深堀りするためのBLの軸になっているのに対して、BL要素がかなり抜かれているメディアミックスだとそこも有耶無耶になってしまい、大河要素にかなり寄ることになる…のだが、大河要素にするときにもこの過去編・現代編問題は大きい。過去編での事件と現代編での事件のつながりが結構弱いのだ。

現代編での事件は、過去編(〜乱葬崗)の直接的な延長ではない。直接の発端は「聶明玦の死」であり、乱葬崗から少したった、とっくに魏無羨が死んでる間の出来事だ。

もちろん金光瑶の問題はそれ以前から始まっていて、金子軒の死の件など魏無羨たちの過去編と全く無関係というわけでもないのだが(こここでも陳情令は比較的頑張っている)、現代編での事件の始まりである「莫玄羽の献舎と鬼腕の投げ込み」を聶懐桑が引き起こす動機はあきらかに兄の死だ。赤鋒尊が死ななければ懐桑はあんなことをせず、魏無羨は蘇らず、忘羨が結ばれる事もなかった。

つまり、忘羨の過去編を1クール見たところで現代の事件解決にはあんまり役に立たない。多分鬼腕の事件のことだけ追いたかったら、いっそ過去編をすっ飛ばして祭刀堂に行ったほうがわかりやすい。もちろんそうすると感情面でのストーリーの流れはちんぷんかんぷんになるが、そうなったときに原作と同じように細切れで過去編を見るのがわかりやすい…と思う。大河ドラマのつもりで見るなら、逆に過去編まとめてみたあとに第一話に戻るのがシンプル。ただし現代と過去のギャップでの面白みは激減。



現代の事件については探偵ものみたいな作りになっている。

忘羨二人が探偵役。匿名の依頼人が聶懐桑、身元不明の被害者が聶明玦、犯人が金光瑶のバラバラ殺人ミステリーだ。

探偵は依頼を受けたから事件に関わっているのであって、本人たちが被害者・犯人に直接因縁があるわけではない。

この鬼腕事件と並行して展開されるのが、忘羨二人の内面的な事件解決ストーリー。主な謎は藍忘機が大梵山で気付いた理由、戒鞭の理由、そしてどうしてそんなに魏嬰に執着してるのか。そのさらに副次的なストーリーとしての江澄・金凌との関係性。これらは過去編に直結する話。

アニメで見ていたときにはこの二つの事件の繋がらなさにただ首を傾げていたが、陳情令を見た際にはオリジナル要素『陰鉄』の設定や金光瑶への悪事の集約具合で比較的繋がりを感じて、うまく改変してるのかなと思った。

が、しかし。原作を読むに、この『因縁のなさ』も意図的で重要な要素だったと感じている。

原作の『因縁のなさ』で特に印象的なのが、窮奇道での金子勲・金子軒殺害に関する蘇渉の関わり合いだ。特に金子軒殺害は最悪に取り返しがつかない事態を招いたが、その原因である金子勲への千瘡百孔はあくまで影薄めサブキャラ蘇渉の個人的な恨みの発露でしかない。それを明かす蘇渉はどこか誇らしげな印象ですらあり。世界は主人公たちのためだけに回っているのではない。

みんなそんなものなのだ。実際のところ、すべてが誰か個人のせいでも、誰か個人のおかげでもない。事情は複雑に絡み合って、誰にその責任を押し付ければいいのかもわからない。便利な押し付け先がときには夷陵老祖であり、ときには金光瑶であり。もう誰も素直に恨めなくなってしまった金凌の描写がグッとくる。みんな少しずつ責任があるはずなのに、知れば知るほどもう誰も恨めない。

『知る』ことも印象深く描かれていた。
大衆は何も知らず無責任に噂する。大義にすがって安心する。
聶懐桑は昔は本当に何も知らなかった。やがて一問三不知で金光瑶すら欺いた。
江澄は金丹の真実を知らなかった。知ったことで少し前に進んだ。
藍曦臣は金光瑶のことも、聶懐桑のこともわからなくなった。
魏無羨は藍忘機が自分にどんな感情を抱いているのか知らなかった。

(そういえば「まだはっきりしないから話さない」という態度も探偵役っぽいねと今思いました)



江澄の話。
江澄は金丹のことを知ったときに「なぜ俺に言わなかった」と泣いて、最後は自分が温氏に捕まったのはお前を守ろうとしたからだ、と言おうとしたのを飲み込んだ。これでおあいこ。

魏無羨は江澄のために身をさらして買い物に行って、それを江澄が助けようとして捕まって、その結果失った金丹を魏無羨が譲って、そのせいで鬼道に走ることになって、でも鬼道のおかげで江氏は勢力を回復して…因果はぐるぐる回り続ける。もう何に対して誰が借りがあるのかなんてわからないくらいに。

アニメだとよりによって金丹の件が観音廟の「あと」に挿入されているので初見時には江澄のやるせなさにどうして…と思ったが、原作だときちんと観音廟で陳情の受け渡し等を通じて「すまない」「ありがとう」も描かれていたので安心した。アニメはどうしてああいう構成にしたんだろう…。

「すまない」「ありがとう」の印象的な交換のあと、忘羨二人で「俺たちの間にはその言葉は不要」をやるのが見事だった。



総じて、様々な立場、思いが絡み合う内面描写がすごく好みな作品だった。同作者の天官賜福も読んでみようかなと思っているし、何より中国語で読むのを目標にしようと思っている。

新しい笛:笛子(竹笛)とプラ管篠笛

新しい笛を買った。笛は増えるもの。
笛コレクション紹介記事も今後書きたい。

笛子(中国竹笛)


先日の台湾旅行のあとに魔道祖師にハマってしまい、勢いで買いました。陳情令見てたらどうしても欲しくなって………。

特徴は吹口と指孔の間にある膜孔と、そこに貼られた笛膜。

この膜が振動することで、独特のビリビリした音がなる。横笛なのにリード楽器みたいな音色がしてとっても不思議な感覚。

今回はAmazonで買った。この商品。

C/D/E/F/G キー フルート 笛子セット 竹笛 紫竹 苦竹 初心者用 中国伝統楽器 https://amzn.asia/d/h8Q6LwM

D調苦竹
C調を買えば良かったかも…と教本をめくりながら思ったが、まぁ5000円くらいだし多分いずれ買うでしょう、笛は増えるので。

5000円くらいだけども笛膜、糊、ケース、飾りまでついている。

音の良し悪しはわからないけれどもとりあえず簡単に音は出るし、音階も問題なさそうな仕上がりでとても楽しい。簡単にYouTubeで見つけたD調数字譜の无羁吹けるかも。

ちなみに吹口の上には漢詩が書いてある。

この詩みたいだ。

絶句 杜甫
両箇黄鸝鳴翠柳
一行白鷺上青天
窓含西嶺千秋雪
門泊東呉萬里船

ちなみにあわせて買った教本がこれ。
笛子基礎教程十四課(上冊) BOOK (華韵) https://amzn.asia/d/iX2GxBy
中国語…やらねばならない。

プラ管篠笛

笛子を買うに当たり、篠笛も持ってないのは良くないのでは(?)と思い至ってあわせて買った。

SUZUKI 童子 七本調子。
アウロスの秀山や日音のものとも迷ったけど、童子は6−8本まで揃ってるから今後欲しくなったときに良いかと思いこれにした。ドレミ調じゃなくて唄物だからというのもある

こちらは笛子より吹きにくい気がする。プラだからかな?

普段はフルートをメインに吹いているので、数字譜が新鮮。西洋音楽とは違う音楽をやっていると世界が広がる感じで楽しい。

しばらく二本とも練習していく。

【英語多読】Oxford Reading Club(ORC) でOxford Reading Tree(ORT)を読んだ

2月の1ヶ月間、Oxford Reading Clubに課金してORTを読んでいたので、その所感など。

英語多読界隈では(多分)みんなご存知、ORT。イギリスのネイティブの子どもたち向けのリーディング教材シリーズ。

SEGのサイトなどでもここから始めるのを推奨されていて気になっていたが、自分で買うには少々お値段が張りすぎる。いつも使っている図書館には蔵書があったけれども禁帯出だし、1冊1冊がごく短いので借りれたとしても頻繁に入れ替えなきゃで面倒だしなぁ、というのがネックだった。

そんな私にはORCはぴったりだった。

Oxford Reading Club | Oxford University Press

ORCは、ORTをはじめとしたオックスフォード出版局のリーディング教材が読み放題になるサブスクサービス。

1ヶ月ライセンスなら990円。キッパーたちのシリーズのORTだけで300冊近く読めるのに、安い…!!

しかも紙だと別売りの音声シールやら音声ペンやらがないとリスニングはできないけど、ORCならアプリ上でリスニングもできて990円。お得すぎ。

「1ヶ月間だけ課金してORTを読破する」を目標にスタート。

毎日コツコツ通勤のバスで読み、2回行った旅行の飛行機で読み…。

無事に読み終えられました。1ヶ月でいける。

流石に時間はなかったので結局リスニングは使わず、リーディングセクションだけをザクザク読み進めた。きちんと全カリキュラムやったら確かにいい勉強になりそう。

スマホだと見開きで見れなかったりしてよみにくいので、タブレットなんかが最適かも。

ORT以外ではOBWのレベル2くらいを読んでいた時期だったから、今更ORTレベルを読んでも…とも思ったものの、GRよりも自然な印象の英語で読みやすかったし、単純に絵本としてもクスリとできる感じで面白かった。MTHより好きかも。

後半のレベルは読み応えもそれなりにありつつ、ページ数はすくないのでサクサクと読めるのもいい。気がついたら300冊弱、累計語数もORTだけで10万語を数えていた。これだけ読めたんだ!という自信につながる。多読の最初期おすすめ本とされている意味がよく分かる。

ORCで読むORT、かなりおすすめしたい。

【台湾旅行:2泊3日】台北王道旅

ずいぶんお久しぶりのブログになってしまった。

書けなかった間に2記事ほどはてな編集部にピックアップしていただいていたみたいで、急にアクセスが増えていてびっくり。

インターネット上の独り言みたいなブログだけれども、誰かが読んでくれているのを感じると嬉しいものです。ありがとうございます。


さて、ブログをしばらくあけてたのは今回の台湾旅行の記事を真っ先に書いておこう…と思いつつ台湾旅行の影響でばっとハマってしまった事があってそちらに時間を取られていたのが大きい。その事については記事の後ろの方で書く。


台湾旅行は2月22日〜24日の2泊3日。今回は母と一緒の二人旅。
大阪旅行は丁寧に1日ずつほぼすべての行動を書いたけど、今回の旅行はこの1記事でまとめる。全然写真がなくてびっくりしている。


台湾には以前から行きたかった。沖縄からだと東京に行くよりよっぽど近いし、高校生の頃からちょこちょこ中国語を勉強していたのもあって。

学生時代には関東から帰省するついでに台湾によって帰ろうかなとか考えたりしつつ、結局バイタリティが足りなくて諦めたりしてた。

沖縄にUターンしてからは母とも行きたいねという話をしてて、実際母のパスポート取得も進めていたのだが、コロナ禍に突入してしまってずいぶんお預けをくらっていた。

そうこうしているうちに、なんやかんやあって弟が台湾に留学することになり、いよいよ台湾に行きたいね〜、気軽に渡航できるようになったら行こうね、と言っていて、ようやく今回実現したのだった。

今回の旅行では旅行会社のフリープランツアーを利用。個人手配よりも費用が抑えられそうだったのと、実は海外個人旅行は私も母もしたことがなかったので安全策をとろうとした形。結果としては、お得はお得だったんだろうけど中途半端に自由が効かなくて、100点満点ではないな〜…というところ。台湾なら日本人の海外旅行難易度かなり低いというのも実感したのでなおさら。次回は個人手配でいくと思います。

1日目:故宮博物院士林夜市

飛行機はお昼ごろに到着の那覇→桃園のエバー航空便。

1時間半くらいの短時間フライトながら一応機内食が出る。往復ともにパンと飲み物だった。

桃園国際空港から台北市内へは旅行会社の送迎車で向かう。車内でサクサクとe−simを設定。KKday経由で買っていた。便利。

道中、パイナップルケーキの専門店(?)に車を寄せられる。何種類ものパイナップルケーキを断れない感じで試食し、どこも観光していないうちに割高ではと思いつつ一箱土産を買ってしまう…美味しかったけれども……。この時点で次回は中途半端フリープラン辞めようと心に決めている。

どうにかこうにか台北市内のホテルに到着。
今回の宿は西門駅すぐそこのミッドタウンリチャードソン(徳立荘酒店)。


まだ春節の期間中だとのことでランタンフェスティバル的なことをやっていた。ここは3日目の朝に散歩することになる。

この日の第一の目的地は故宮博物院機内食とパイナップルケーキ試食で昼ご飯状態になってしまった。本当は「旅先でとりあえずマックに入る」悪癖をしたかったのだが(海外旅行ならご当地メニューあるから意味もあるし…)母に付き合ってもらうのもアレだったので良かったかもしれない。時間もなかったので結果オーライ。

西門駅からMRTに乗っても良かったけど、せっかくだし街の雰囲気も味わおうよということで台北駅まで徒歩で行ってみる。当然だけど中国語だらけで、でも繁体字だから意外と読めてしまって、大都会なのにどこか沖縄っぽい雰囲気があって、なんとも不思議な感覚だった。

沖縄の田舎でずっと引きこもっている母は、物乞いを見かけて衝撃をうけていた。日本にはいない、と。確かに日本ではあまり見かけない姿だけれども、多分母には県内の路上生活者なんかも見えてないんだろうなと思った。何となく、遠くに来たなぁと思った。


台北駅構内で迷子になりつつ、MRTのレッドラインで士林駅へ。台北MRTはわかりやすくてすんなり乗れたし、運賃が安い。東京の複雑怪奇な電車より圧倒的気楽さ。情報どおりアナウンスに台湾語客家語があって、おお、と思う。

士林駅からは路線バスで故宮博物院に向かう。こちらはMRTと違って路線が複雑で結構緊張したが、故宮博物院までの王道ルートなのでバス停に並んでる人の大半は同じ目的地である。とりあえず人の波に乗ってたら無事に降りられたので良し。


バス停から登っていくよ〜

歩き疲れてしまい茶をしばく。母子もろとも体力がない。

そんなことをしているせいで時間がなくなり、大慌てで観覧することになった。もし一人旅だったら一日ここで過ごす旅をしてたと思う。

全部見るのは無理なので、絞ってみていく。
まずはなにはともあれ玉コレクション。



かの有名な肉。白菜は貸出中だった。思っていたよりも小さいが思っていたよりも肉。美味しそう。

ほかにも精巧な品々にずっと感嘆の声をあげていた。どうしてわざわざ肉やら白菜やらを彫ったんだろ?と思っていたけど、加工の過程を説明する展示で途中経過を見て納得した。そもそも素材の石のグラデーションなんかがもうすでに白菜だ…。白菜を彫らないほうが失礼まである(?)。

玉の他には書のコーナーをじっくりめに見た。昔一応書道を習っていたことがあるので(あまり大声で言えない程度に不真面目な生徒だったから成果はないんだけど)、なんだか懐かしさもあり。

世界史の教科書で見たことあるような品々を眺めながら、すごいなぁと思いつつ、これらが今はこの台湾で展示されている歴史の流れにも思いを馳せつつ。次はもっときちんと時間を取って見学したいし、展示の中国語を読めるようになっていたいし、国立台湾博物館等の「台湾」にフォーカスした博物館にも行きたい。


閉館ギリギリに退館。来た道を逆にたどって一度ホテルに戻ってチェックイン。しばらく休んだあと、弟と合流した。

春節の装飾がライトアップされた街なかを歩きつつ、MRTを乗り継いで今日3度目の士林へ。

このへんは写真何枚か撮っていたけど人混みがすごすぎて画像の加工が面倒なので、これくらいしか当たり障りない写真がない。中国語をぺらぺら喋る弟におんぶにだっこでいろいろと食べ歩く。超観光地だから多分中国語できなくてもどうにでもなっただろうけど、語学、やろう。ほかにも食べてみたいものあったので再チャレンジしたいが人混みはキツかった。

2日目:九份・十分

2日目は少し足を伸ばして九份・十分を目指す。朝食はホテルのビュッフェ。饅頭がなぜだか嬉しい。

絶対九份の人混みがすごいのはわかっているので、朝一番の少しでも空いてる時間を狙うことにする。西門駅からも直行バスがあったが、時間をあわせたりするのがちょっと面倒なので台湾鉄道で行くことにしていた。単純に乗ってみたかったのもある。

のんびり普通列車で車窓を眺めているうちに瑞芳駅へ。そこからさらにバスに乗り継いで九份老街へ向かう。


朝すぎてあんまり店は開いてないがその分人も少なくて歩きやすいし、雰囲気もちょうどいい。

阿妹茶楼にもすんなり入れた。お茶も美味しかったです。

今回の旅行では母と一緒なのもあって寺院巡りみたいなことはあまりできなかった。リベンジしたい。


一通り満足して、お昼ごろには再び電車に揺られて十分へ向かう。瑞芳駅も小さい古めの駅でびっくりしたけど、十分はさらに小さく古い。利用人数に対して色々キャパが間に合ってないような印象。

母のたっての希望だったのでランタン上げをしたけれど、環境的にどうなんだろう…などとはどうしてもチラついてしまい。一人旅だったら多分あげなかったと思う。一観光客としては雰囲気は好きだなと思いつつオーバーツーリズムが気になったりもした。

電車が1時間に1本しかないので、待ち時間で牛肉麺を食す。比較的空いてたので注文程度の中国語チャレンジができてちょっとだけ嬉しい。あとから来た日本人観光客には日本語で声をかけてた。

台北市内に戻る。
間に合ったら中正記念堂の衛兵交替式が見たいと言っていたのだが、間に合わず。
しかしダメ元で行ったらちょうど国旗の降下式をやっていた。



西門に戻る。夕飯を求めて繁華街へ。都会だ…。「台湾の原宿」とガイドブックに書かれていた意味を理解する。東京旅行するときにわざわざ原宿みたいなとこで宿取らないし、これもフリープランツアーだからこその立地だった。


事前にガイドブックで目をつけてた店は閉まってたけど、小籠包も魯肉飯も食べられました。満足。

夜はベッドに寝転びながら、少し真面目に家族の話をした。

3日目:永康街散策

3日目。この日も弟と合流して案内して貰う予定。

朝食を早めに終えて、腹ごなしがてら近くの広場のランタンフェスティバル展示を見に行く。

夜行ったらもっと凄かったろうな。

弟と合流。
衛兵交替式を見れなかった話をしたら、時間ちょうどいいからと再チャレンジすることに。
何度か見に行ったことがあるらしく位置取りまで完璧な案内で見学できた。母は満足そうだった。

個人的には中正記念堂までいって展示部分は全く見なかったのが心残りなので、ここも再チャレンジしたい。

そのまま永康街へ。
母の希望で雑貨を探したり、お土産用にお茶を買ったり。

私は永業書店が楽しかった。何か欲しかったけどあんまりのんびりはできなかったのもあって細かくは探せず。日本のラノベやマンガの翻訳コーナーで『銀の匙』を見つけて1巻買ってしまった。

そしてホテルに戻ってツアー会社の人に拾われて、桃園国際空港へ。

空港でのんびりしつつ、夕方の便で那覇に帰った。

まとめとそのあと

中国語は全然できないけど、王道観光地ばかりを巡ったのもあってどうにかなった。繁体字のおかげで「発音も文法もわからないのに文意はなんとなくわかる」体験がいっぱいできて面白かった。漢字ってすごいぜ。

街なかにはちょいちょい(怪しい)日本語もあったりして、最近日本でも中国語や韓国語併記増えてるけどこんな感じなのかもな…とも思ったり。全然日本関係ない商品の看板にも「〜の◯」みたいに「の」が使われてるのを見てちょっと面白かった。

でも、中国語ができればもっと色々とストレスなく楽しめただろうな〜とも思う。

さっそく勉強したい気持ちが湧いてきて、勉強のモチベーションのために「原語で読みたい本」を設定することにした。英語の多読がその動機づけでいい感じに進んでいるので。

そこでふと選んでしまったのが墨香銅臭『魔道祖師』。台湾じゃなくて大陸の作家さんだけども(ただし表現規制のかねあいで『繁体字版で読む』が意味ある作品になっているのである種正解ではある)。

元々気になっていたのもあってとりあえずアニメ版を見てみたら面白くて、そこからがーっと陳情令をスピンオフまで見て原作日本語版も読んだりしていた。おかげでブログを書くのが今更になった。中国語わかりたいという思いと、中国での表現規制について考えてしまったりと、色々。


閑話休題
もっぱら一人旅が多かったので、連れがいる旅行は本当に久しぶり。正直個人的には消化不良感はものすごくある。もっとじっくり見たかったところがいっぱい。

一方で、自分一人だったら絶対行かなかっただろうなというところに行けたのは逆に良かったのかも。

台湾は近いし、また一人でじっくり旅したい。