おそらく読み返すのは前回全集を通読したとき以来で、つまりは10年以上ぶり。細かいところはかなり記憶が薄れていて、ハラハラドキドキしながら一気に読んでしまった。
『ジム・ボタン』は『はてしない物語』や『モモ』よりも対象年齢が低めな印象で、かなりサクサク読める。『機関車大旅行』と『13人の海賊』をあわせると700ページ近くあるのでボリュームとしては『はてしない物語』並なはずなんだけど、その重さを感じず勢いよく一気に読めてしまう。1章1章が短く、一つの問題がその章の間で解決するようなテンポの良さのおかげでもあるのかもしれない。それでいて最終的には全部が繋がって丸く収まるような流れで、お話がうますぎる…と感嘆していた(何目線??)。この1章1章の区切りの良さは、寝る前の読み聞かせなんかで1日1章ずつ読むのも良さそうだなと思った。ハラハラする場面は何カ所もあるんだけど、基本的には明るくて、読後感がすごくいい。読み終わった後に、明日はきっといい日になるなと思えるような物語。
『ジム・ボタン』の舞台かなりデフォルメされメルヘンチックながら、同じ世界上にはドイツ、インド、中国やアメリカが存在し、読者の手紙も届く地続きの世界だ。人魚や竜がいたりするし宝石みたいな木が立っていたりするけれど、機関車(感情があるし子どもが生まれたりもするが)も走るし電話もある。このファンタジーと"地続き感"のバランスが面白くて、かなり好み。同じようなバランス感覚を岡田淳作品に感じている節があるかもしれない。
キャラクターもみんな魅力的だ。悪役たちも含めておのおのの結末も明るくて、すごく前向きになれる。個人的な一番お気に入りはピン・ポン。各登場人物たちの物語をもっともっと読みたいなと思う感覚は『はてしない物語』の"別の物語"が気になってしまうのと同じ。
今回読み返してみて印象的だったのがトゥー・トゥーさんの話とネーポムクの話だった。こんなにストレートに差別と偏見の話だったのか、と。本当は普通の人どころか相当いい人なのに「見かけ巨人」が故に誤解されて孤独なトゥー・トゥーさん、本物の竜たちから疎外されているからこそ本物の竜のように振る舞おうとするネーポムク。このふたりがそれぞれ良い結末を迎えるのも嬉しい。
なお、『機関車大旅行』の解説には『13人の海賊』のネタバレががっつりしっかり書かれているので、万が一初見の人が読む場合は2巻まとめて読み終わってから解説を読もう!!私は久々すぎて『13人の海賊』の記憶を大分忘れていたのに、ここですべて思い出しました。「全集で読んでいる人間は初見な訳がない」という思想なんだろうか…。むしろ『13人の海賊』の方の解説にはストーリーの展開に踏み込む話はそれほど多くない。
解説で何度もリンドグレーンに触れられていて、読みたくなった。『長くつ下のピッピ』は多分小学生の頃に一度読んだ記憶があるんだけど、ここ数年『ミオよ、わたしのミオ』が気になる機会が何度かあったりして。いよいよ読まなければならない気がしている。最近出た岩波単行本の表紙が酒井駒子なんだよね。
解説内容についてかみ砕いたり言語化しておきたい気持ちもあったりするけれど、そのあたりは対談集系を読み進めたときにまとめて書くかな、というところ。せっかくラスト・トークつきをそろえたけれどラスト・トーク順には読まないからあとで読むのちょっと大変そうで、結局『ものがたりの余白』で確認する気がしている。


















