つかのま。

読書と日々考えたこと

Megan Whalen Turner『The Queen of Attolia』(Queen's Thief 2)

どうにかこうにか読み終えました、2巻。
シリーズものはまとめて感想を書きがちだったけど、流石にこのシリーズは1冊ずつ書くと思う。なんせ約半月かかって読んでいるし、英語多読の記録も兼ねて。


アドベンチャーの1巻とはずいぶん雰囲気も打って変わって、政治と戦争を巡る第2巻。確か日本語での初読のときも、全然違うじゃん!とびっくりしたのを覚えている。語り手は「おれ」じゃないし、開始すぐに右手を切り落とされるどん底スタートなのが衝撃的だった。

1巻は前半がプラスに向かう雰囲気の比較的明るくライトな冒険で、50%付近で急転直下悪くなるという感じのストーリー構成だが、2巻は前半でいきなりズドンと落ちて苦しい展開が続き、50%付近で状況の変化が起きる。日本語でも前後編にちょうど分かれているところのはずだけど、命令が「アトリアの女王を盗んで」に変わるところ。そしてこの命令が、最終的に二人が結婚するところまで繋がっていく。アトリアの女王の物理的な誘拐はナフレセシュ(とそれを導いた神々)によって失敗するけれど、最後の最後、エウジェニデスは真の意味で女王の心を手に入れる。

2巻は印象的なシーンが多い。
例えば手を切り落としたあと、アトリアの女王が「割ってしまったお気に入りの髪油の壺」を思い出すところ。目の前の不可逆的な傷に重ねるのがその幼少期の記憶なのに悶絶するが、後半に行くにつれてそれがただの物理的な喪失の記憶なだけでなく、イレーネの幼少期の終わりと石の仮面の誕生に繋がっていく決定的な終わりの象徴だったのだと気付かされていく。これは中盤、自分を誘拐しに来たエウジェニデスがすっかり変わってしまったのだと思うところと、最後のシーンで自分の石の仮面がもう自分と不可分になっているところまで貫かれるイメージになる。

何かを失った時、何を得るのか。何かを得た時、何を失ったのか。それぞれの獲得と喪失の物語。

エウジェニデスは右手と自由を失って、最終的にイレーネの愛と2国間の平和を得た。
イレーネは幼少期の頃のようには戻りようがないが、アトリアを自ら治め守るだけの力とエウジェニデスからの愛を得た。
ヘレンはエディスの盗人を失って、アトリアとの平和と予知された破滅を避けるための布石を打った。

他にも、ソウニスに帰れなくなったメイガス。へスピラの挿話。エウジェニデスが盗んでは祭壇に捧げてきた(二度と取り戻せなくなった)ものたち。失われた命たち。振り返ればあちこちにたくさんの"喪失"が散りばめられていた。かわりに何を得たのか、それともそれは本当に不可逆的喪失なのか。過去一この巻をしっかりじっくり読めた気がしている…。


英語の面。
1巻から立て続けに読んでいるので、引き続きよくでてくる単語も見慣れてきてぱっと意味が取れるようになってきた。そういう点では1巻よりも楽に読めたと思う。若干の成長を感じる。

1巻に比べるとぐっと政治的な話が増えてくる分、内容的には難しく感じる。細かい戦況や策略は正直結構飛ばし読みをしてしまった。日本語でもぼんやりしか覚えてないし…。

それでもストーリーの機微は味わえるぐらいには読めていたし、何よりおまけの未邦訳短編"Knife Dance"を読めたのが本当に嬉しかった。ごく短編だけどもこの先未邦訳巻にたどり着けたらこんな感じなんだなと想像できたしモチベーションもあがる。こういうちょっとした本編の狭間の話、大好き。

Knife Danceの登場人物たちの喋り方が本編の登場人物たちのセリフとはだいぶ感触が違うなというのもばっちり感じられて、こういうところでキャラ性を感じるんだなぁと思うなど。

多読の記録としてはこの本で約10万語を稼ぎ、トータルでは35万語ぐらいになっている。GRはOBWのlv.2に入りつつ、合間合間でMTHを読み進めているところ。

通勤時間に読む枠としてのQueen's Thief読み進めはここで一旦休止して、Oxford Reading Clubを今日はじめた。噂のORTをざーっと1ヶ月のアクセスコードで読み切ってしまおうかと。

一応もうOBWのlv2読めているんだから今更ORT読む意味ないのでは…?と思わなくもないんだけど、MTH読んでいるとやはりネイティブ向けのもう少し易しいところで積み重ねてたほうがいいんでは?と思う部分も若干あり。スピードアップにもなればいいなぁという思いでひとまず1ヶ月やってみます。ORCについてはまた別で感想を書きたい。

3巻"The King of Attolia"を読むのは少なくとも多読語数が50万語を超えてからにするつもり(Queen's Thiefで稼いでしまった17万語ぐらいは除外して…)。ほかの簡単めの児童書ももっと開拓していきたい。