つかのま。

読書と日々考えたこと

立山良司(編著)『イスラエルを知るための62章【第2版】(エリア・スタディーズ)』

エリア・スタディーズシリーズは前から気にはなっていたものの、読むのは初めて。入門書として、文化や歴史に留まらず、政治や外交、経済など幅広いトピックを平易な語り口で、かつ通読する上で厚すぎず薄すぎないボリュームでまとめているという印象を受けた。単著ではなくそれぞれの分野に詳しい著者を集めた形式でどの章も読み応えがあった。巻末に分野別の参考文献リストがついているのも便利で、まずこの本を通読してから各分野をさらに掘っていくという勉強の仕方が出来そう。近所の図書館にそれなりに蔵書があったので今後もこのシリーズを何冊か読んでみたいと思う。誤字がそこそこ目に留まったのは少し気になった。


イスラエルに関心を持ったきっかけはイディッシュ語だ。元々ミヒャエル・エンデが好きでドイツ語を囓っており、その勉強の中でドイツ語の関連言語として紹介されていた記憶がある。そのときは「ユダヤ人コミュニティにおけるドイツ語の変種」程度の情報量と認識だったが、その後大学で言語学と聖書ヘブライ語を学ぶ機会があり、そこで再びトピックとして触れた「ヘブライ文字で書かれたイディッシュ語」をドイツ語の知識を使って曖昧ながら読めたとき、俄然興奮した。エンデ好きの趣味が高じてやっているドイツ語と、それとは別の興味で学んでいる(そしてカリキュラム的に必修でもあったので取っていた)ヘブライ語が結びついたという超個人的な理由と同時に、これまで主にホロコーストの歴史やイスラエルアメリカをめぐる国際社会の話題などで触れるだけでどこか平面的な文字列として触れていた「ユダヤ人」という存在が解像度を上げたように感じた。この言葉で書き・話した人たちがいたのだ、今もいるのだ。そんなこんなで興味を持ち、これまでにもイディッシュ語を囓ってみたり、(翻訳で)イディッシュ文学を少しばかり読んだりするうちに、ディアスポラアイデンティティについて考えるようになった。その先には当然、今の国家としてのイスラエルが関わる数々の問題があった。


今回このタイミングで本書を手に取ったのは、最近現代ヘブライ語文法の新刊本を手に入れたから。

入手はしたもののまだほとんど読めていない。読んだらまたブログに書きたいことがあると思う。現代ヘブライ語は「復活」した言語であるという点でまた別の視点から関心を持っている言語の一つだから。


ユダヤ系とアラブ系。世俗派と正統派。それぞれの出生地。周辺国や欧米との関係性。読んで一番に考えたのは「共に生きること」だった。昨今の世界情勢や、移民のことについて考える。身近な事件や差別やいじめのことを思う。共に生きるということの難しさよ。その方法と現実を求めるためにも、今後もイスラエルのことは考えていくことになるのだと思う。いつか一度は訪れてみたい国の一つでもある。