つかのま。

読書と日々考えたこと

佐藤謙三・小林弘邦(訳)『義経記』(平凡社ライブラリー)/角川書店(編)『おくのほそ道』(ビギナーズ・クラシックス)

先日の平泉旅行↓のおともに読んでいた2冊をまとめて記録。
tsukanoma.hatenablog.jp

佐藤謙三・小林弘邦(訳)『義経記』(平凡社ライブラリー)

『義経記』の現代語訳版。
原文に忠実を心がけた訳なので現代の小説感覚で読むには多少読みにくさはあるが、訳注や補足、意訳、異本からの挿入など「より深く物語を楽しむ」工夫が豊富で楽しく読めたしとても勉強になった。


なんだかんだ『義経記』を通しで読むのははじめて。
・判官贔屓気味
・義経がめちゃくちゃかっこよく書かれている
・弁慶の物語に触れたいならコレ
…くらいのイメージで読み始めた。

実際、『義経記』の義経はめちゃくちゃかっこいい。読んでいてつい恥ずかしくなるほど(?)見た目がよくて賢くて戦につよく、人望もすごい。

ここまでくるとちょっとやりすぎ…というほどなのに、読み進めていると人間らしさを覚えてくる。
一番印象的だったのは巻七「あらち山のこと」で、奥方に地名の由来を説明する場面。いかにも本当らしいことを言ったら弁慶に「それは違う」と突っ込まれて、弁慶が正しい由来を披露したら「義経もそうだと知っていた」と笑うところ。

北国落ち中の山中という極限に近い状況にもかかわらず、冗談めかすようなやりとりに衝撃を受けた。『義経記』は『平家物語』で語られるような源平合戦での華々しい活躍はほとんど描写せず、メインはその後の逃避行だ。その後に待ち受ける結末も全部知っているから、この先は悲劇になっていくはずなんだ…と身構えてしまうのに、作中の義経一行は時に冗談を言ったりコミカルな雰囲気になったり、暗さの中にひとときの明るさ・楽しさがある。それに思わずクスッとしてしまうたびに、この先の展開が思い起こされて引き戻される。

読む前と読んだ後では弁慶のイメージもかなり変わった。「めちゃくちゃ強い忠義の荒法師」みたいなイメージだったけど、知の部分もかなりあるし、冗談を言ったりうっかりしたりもある。こちらも、義経同様読むほどに人間らしさを感じて好きになっていった。

次は古文で読んでみたい。小学館の日本古典文学全集が全文、放送大学経由のジャパンナレッジで読めることに今更気づいた。やった~!ジャパンナレッジもどんどん活用していきたい。

角川書店(編)『おくのほそ道』(ビギナーズ・クラシックス)

古文・現代語訳・解説がセットになっていて読みやすい。

源平旅もどきをちょいちょいやる人間として、松尾芭蕉には勝手にちょっとした親近感を持っていた。木曽義仲が好きだし…。
しかし、『おくのほそ道』は国語の授業でいくつかの部分を読んだ程度で、通読したことがなかった。今回通読してみたら、ますます芭蕉への勝手な親近感が増してしまった。

この本では「旅の最大の目的地は平泉と言って過言ではない」と解説されている。ちょうど東京から平泉に向かう旅程で読んでいたので、ここでまず1ポイント。
道中訪れる名所/名跡ではそれぞれの由来や想起される古典知識なんかを惜しみなくつかって堀深める。私にはそんな素養はないが、憧れの姿ではありさらに加点。
私もこんな旅がしてみたいなと思ったり。芭蕉の他の作品も読みたくなった。

こちらの本も解説が充実していて、さらっと読めるのに勉強になった。Kindleで読めるのがこれだから…くらいの理由で選んだのだけど、かなりよかった。他のビギナーズ・クラシックスシリーズも読んでみたい。