手元にあるのは『月神の統べる森で』シリーズのみ…。このシリーズは2024年に読み返したばかりなので、別の作品が久々に読みたい気持ちが強かった。
図書館に行けば神様三部作やイサナも借りてこれるが…どうにもしっくりこないインサイトを深掘りしていくと、私が本当に求めているのは「たつみや章の新作」だった。
「たつみや章」の作品は全部一度は読んでいる。そしてどうやらもう「たつみや章」名義で作品は書かれていないということも知っている…。
…読むか、今こそ。『秋月こお』を。
と、いうわけで、このたびついに『秋月こお』名義の作品を数冊読んだ。その後に『たつみや章』名義の作品も一気読みしたので、まとめてブログに書いておく(こちらは別記事にて)。
たつみや章が『秋月こお』名義でBLを書いているというのはずいぶん前から知っていた。高校生の頃かな、イサナの続刊…と飢えていたころに調べて知った記憶がある。
しかし、いかんせん『月神の統べる森で』にクソデカ感情を抱きすぎていたので、そもそも恋愛ものに全然食指が動かないのもあってBL…BLか…と思い悩みつつこれまで敢えて手を出さずに来た。
たつみや作品の美形男性の描き方を思うとまぁ、と納得する部分はありつつ、基本的に「児童文学」の枠組みで読んでる都合、性的な目で見たこともなかったから(間違いなくヘキを形成されたな…と思うシーンは数カ所あるが…)、万が一自分の中のたつみや章作品の思い出が塗り替えられてしまったら…もう二度と読めなくなってしまったら…と過剰にセンシティブになってしまって怖かったのだ。それだけ『月神』は私の中で重い作品だった。
今回はとにかくお試しで読んでみよう、だめだったら即時撤退しよう…のつもりで、Kindleで気軽に買えそうなものから選ぶことに。ちょうど太平記の流れで歴史熱が上がっていたこと・たつみや作品の中でも古代っぽいものが特に好きなことから、平安ものの『王朝春宵ロマンセ』シリーズをチョイスしてみた。
読み始めるとこれまでのたつみや章のイメージからは大きく離れたかなりライトな読み口で、まずはガツンとびっくりした。
お耽美系かしら…と勝手に思ってたら、なんかこう、結構がっつりラブコメBLラノベですね!?
それなりに濡れ場もあったりするような作品だったが、「たつみや章」のイメージと違いすぎて事前に心配していたような印象の上書きは全く起きず、しかし文章がスルスル読みやすいのはたつみや作品と一緒で、台詞まわしにもたつみや感(?)を感じ、確かに同一人物だ……とかみしめながら気づけばあっという間に全四巻+外伝3巻を一気読みしていた。
BLとしては、正直あまりメインCPにハマりきれなかった。メインの諸兄×千寿丸は序盤から相思相愛のイチャイチャ具合で、大型犬×小型犬という感じ。二人の恋路を脅かすような事件は起こるものの、全然心配にならないくらいには常にイチャついているハッピーCPという印象だった。せめて諸兄がもうちょい早く短慮を克服してくれたら…。BLとして好きだったのはむしろサブCPの業平と国経。千寿丸への思いをこじらせたところから深まっていく仲…BLは薄暗いCPが好きなので…。業平と国経って若干ホムタの系譜ではないですか?(審議)
メインCPにハマりきれないので、面白いけど秋月先生とはヘキが違うな…このシリーズは読んでも他BL作品には手は出さないかな…と1~3巻あたりでは思っていたのだが、4巻から一気に風向きが変わった。たつみや名義から入った人へ、4巻からが本番です。
4巻はこれまでで一番の大事件がおこり、さすがに二人もイチャついている場合ではなくなってくる。業平と国経もそれぞれ千寿への思いをある程度処理して、人間関係が恋愛感情以外のものになっていくあたりも肌なじみがいい(そもそも単純に恋愛ラノベに向いてないオタクなだけでは??)。そして、物語にはがっつり"神秘"が絡んでくるようになる。ここからはもう「たつみや章」をひたすらに感じる描写と展開が続いていく。実家だ、ここが実家だ…といいながら読んでいた。実家ではない。
神秘の描写だけでなく、精神面の部分についてもたつみや章を感じまくった。例えば阿闍梨が敵も弔う様子だったり、それを見た千寿が「無常」をふと理解するところだったり。ちょっと飛ぶけど外伝3巻の三途の川の場面とか。というか外伝3巻はほぼまんま月神の流れである。やられた!!!と頭を抱えていた。外伝3巻が一番面白い、この巻はBL的にもメインCPの雰囲気がかなり好みに近くなる。
4巻~外伝がかなり面白かったため、これは全然秋月こお作品、イケるな…と思い、あと1作品読んでみることに。
そこで選んだのは古代ファンタジー系の『スサの神謡』。こちらは古墳時代くらいをイメージしたもので、世界観の雰囲気はかなり月神・イサナに近い。神々の描写はちょっと『夜の神話』っぽい感じかも。
こちらは世界観・設定、端々の描写にもかなり"たつみや感"が強く、秋月こお作品チャレンジ前に想像していた「秋月こお名義のBL」のイメージに近かった。が、しかし…今回もあまりメインCPにハマりきれず。王朝ロマンセよりはシリアスなCPで好みに近いのだが、やはりこちらもほぼ一目惚れ(というか運命)で結構ずっとイチャついている状態ではあり、世界観や大まかな流れはずっとシリアスなのにBLシーンで急にラノベになる感じで惜しい…!!となってしまった。そりゃラノベだからねといわれたらそうなんですが、BL部分の細かい展開ももっと丁寧に重厚に…とどうしても思ってしまって。魚を産むシーンなんかはかなり神秘的エロティシズム…という感じでいいのですが…。正直ちょっと古いなぁ、と思ってしまう部分も随所にあった。そりゃ古いんだけど。
メインCPの好みがあまり合わない可能性を感じており、さすがに秋月こお作品全制覇!はやらないかなぁ…というのが正直なところ。しかし確かに面白かったし文章の随所にたつみや章を感じて、あぁ文章も好きだったんです…というのを思い出せたので、まだ何冊かあるらしい歴史もの系だけは今後少しずつ読んでいこうかなと思っている。

